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DeepMind、15年のゲームAI研究を総括 — SIMA 2とEVE Onlineで汎用エージェントの新段階へ
2010年の創業以来、AtariのDQNからAlphaGo、AlphaStarを経て現在のSIMA 2へ。10のゲームスタジオとの連携と、Fenris Creations(旧CCP Games)とのEVE Universeでの研究パートナーシップを軸に、永続的で開かれた世界での学習・適応・共存を探る構想を示した。
Google DeepMindは2026年8月21日、ブログ「From Atari to EVE Online: Building on 15 Years of AI Research in Games」を公開し、創業(2010年)以来15年にわたるゲームAI研究の軌跡と、汎用ゲームエージェント「SIMA 2」を軸とする次の段階をまとめた。Atariでの深層強化学習の端緒から、EVE Onlineのような永続的でプレイヤー主導の世界での研究へと焦点を広げ、ゲーム開発者との協業を通じて「遊び」を起点にフロンティアAIを前進させる構想を示している。
AtariからAlphaGo、AlphaStarへ — ゲームが牽引した15年
DeepMindのゲーム研究は、制約がありつつ豊かなゲーム世界を「知能を理解するための実験場」と位置づけてきたことが核にある。
- Atari DQN(2015年Nature): 生のピクセルから49のAtari 2600ゲーム(Pong、Breakout、Space Invadersなど)をゲーム固有の工夫なしに学習するDeep Q-Network。現代の深層強化学習の触媒となった。
- AlphaGo(2016年)/AlphaGo Zero/AlphaZero/MuZero: 人間の棋譜なしの自己対局で最強を更新し、囲碁・将棋・チェスを一つのアルゴリズムで制覇、さらにはルールを与えずに学習するMuZeroへと一般化した。
- AlphaStar(2019年、StarCraft II): リアルタイム性と不完全情報を伴う複雑さでGrandmasterに到達。AlphaGoの「Move 37」のように定石を覆す発見が、専門家の戦略やその後のAlphaFold(タンパク質構造予測、2024年ノーベル化学賞)など科学への応用にも波及したと整理している。
同社は、ゲームでの探究心が科学的発見へ転用されてきた歴史を強調しつつ、近年の問いは「与えられた目的を極める」から「ゲーム世界を人のように理解し相互作用できるか」へ移ったと位置づける。
SIMA 2と10スタジオ協業 — 「見せる、語らない」プロトタイピング
現在の中心にあるのが、汎用ゲームエージェント「SIMA 2」だ。DeepMindは、SIMA 2をGeminiや生成型のインタラクティブ環境、身体性を持つエージェント研究と結びつけ、既存ゲームにコード改変なしで働く汎用エージェントを目指すと説明する。想定される応用は、世界を理解するAIコンパニオン、スクリプトを超えて適応するNPC、コミットごとに変化する開発中のゲームでも破綻しないQAエージェント、ローンチ後の新規コンテンツや予測不能なプレイヤー行動へのリアルタイム適応などだ。
研究の進め方は「It’s not about the tech, it’s about fun experiences. So we take a ‘show, don’t tell’ approach」を掲げ、ゲームスタジオと手を取り合って遊べるプロトタイプを作り「楽しさ」を見つける手法を取る。今回のブログで挙げられた協業スタジオは以下の10社だ。
- Coffee Stain(Valheim, Satisfactory, Goat Simulator 3)
- Fenris Creations(EVE Online, EVE Vanguard, EVE Frontier)— 旧CCP Games
- Foulball Hangover(Hydroneer)
- Hello Games(No Man’s Sky)
- Keen Software House(Space Engineers)
- RubberbandGames(Wobbly Life)
- Strange Loop Games(Eco)
- Thunderful Games(ASKA, The Gunk, Steamworld Build)
- Digixart(Road 96)
- Tuxedo Labs & Saber Interactive(Teardown)
EVE Universeでの段階的研究 — オフラインから共存へ
次の大きな舞台が、Fenris CreationsとのEVE Universeでの研究だ。2003年から続くEVE Onlineは、プレイヤーの選択が永続的な帰結を生むサンドボックスとして知られ、長期にわたる学習・適応・記憶、そして人間とAIの共存という、他にない時間スケールの課題を突きつける。
DeepMindは研究を段階的に進める計画を示した。
- 第1段階: ライブプレイヤーから隔離されたEVE Onlineのオフラインインスタンスで、安全なサンドボックスとして基礎能力を検証
- 第2段階: EVE Frontierで、人間とエージェントが永続的かつオープンエンドな世界で共存する様子を研究
- 成熟後: EVE OnlineおよびEVE Vanguardで、人間のプレイを豊かにする形での導入を検討
Fenris Creations側は「AIが学び、適応し、記憶することが求められる未踏の領域で、仮想環境での人間とAIの共存を、現実世界で同じ問いに直面する前に理解する機会になる」とコメントしている。
DeepMindは、ゲームが複雑で永続的、オープンエンドになるほど、それを航行するAIにも継続的に経験から学び、学習速度自体が加速するようなフロンティア能力が求められるとし、それが将来の新たなゲームプレイ体験の解錠につながると展望する。長期的な狙いは「AIを代替ではなく触媒に」することであり、ゲームをよりアクセシブルでパーソナルにしつつ、ゲームで得た知見を現実世界の問題解決や科学的発見へ還元する循環を目指すと結んでいる。
出典
- From Atari to EVE Online: Building on 15 Years of AI Research in Games — Google DeepMind Blog
- SIMA 2: An Agent that Plays, Reasons, and Learns With You in Virtual 3D Worlds — Google DeepMind Blog
- Studio behind EVE Online goes independent, rebrands as Fenris Creations, enters research partnership with Google DeepMind — Fenris Creations