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Claudeが素粒子理論の9ループ振幅を計算 — 公開チャレンジに応答、SLACのDixon氏が検証

Anthropicの物理学者2名がClaude Fable 5.1とClaude Scienceを使い、平面N=4超対称ヤン・ミルズ理論の6粒子振幅を9ループまで計算した。2023年の8ループの記録を1つ上回る。検証したSLACのLance Dixon氏は「複雑なレシピの全手順を実行した勝利」と評価する一方、新しい物理原理は含まないと両者が明言している。

Anthropicは2026年9月25日、Claudeが理論素粒子物理学の未解決計算の1つである平面N=4超対称ヤン・ミルズ理論の6粒子(ヘキサゴン)振幅を9ループまで計算したとするゲスト投稿を研究ブログで公開した。2023年にLance Dixon氏らが達成した8ループがこの計算の従来記録で、1ループ上回ったことになる。以下は同投稿の記載内容の整理であり、独立した物理学的検証ではない。

チャレンジの経緯 — 8月の公開課題に1か月で応答

  • 課題の提示: 元理論物理学者で科学ライターのMatt von Hippel氏が2026年8月7日、自身のブログでAI企業向けに公開チャレンジを提示した。学術研究者が使える規模の計算資源で、散乱振幅分野の未解決問題(N=8超重力の7ループ、またはN=4超対称ヤン・ミルズの9ループ)を解くことを求める内容だった。
  • 挑戦者: Anthropicの物理学者Liam Fitzpatrick氏とSiddharth Mishra-Sharma氏が8月末にvon Hippel氏に連絡し、9ループ問題に取り組んだと伝えた。
  • 実行環境: モデルはClaude Fable 5.1で、有料の科学研究向けプラットフォームClaude Science(構造化されたルールとプロンプトでLLMを包む「ハーネス」)内で動作させた。
  • 指示の内容: 与えた課題文は「平面N=4 SYMの6粒子ヘキサゴン振幅を9ループで計算せよ」という1文で、以降の人間の関与は「寝るので数時間は戻らない、そのまま作業を続けて、4〜6時間ごとに進捗を報告せよ」といった継続指示が中心だったと投稿は述べている。
  • 計算の規模感: 投稿によれば、散乱振幅の計算は通常2ループまでが大半で、3ループに届くものは一部、素粒子物理学で最も精密な予言とされるもので5ループという水準にある。9ループは当該の toy model における最前線の計算だった。

計算の中身 — 2つの独立経路、費用は数千ドル規模

  • 2つの経路: Claudeは直接的なブートストラップ法と、フォームファクター経由の間接法(antipodal dualityを用いる方法)の2通りで計算し、両者の答えが一致した。独立した2経路での一致は、この分野で誤りを捕まえる標準的なやり方だと投稿は説明している。
  • 費用: いずれの経路も、エンドユーザーが再現する場合の費用は1,000〜2,000ドル程度で、その大半はClaudeの長時間実行コストだった。ブートストラップの数値計算部分自体はPython+SymPyで約100ドル分(96 CPUで1週間相当)と記載されている。
  • 検証: 8ループの記録保持者であるSLAC国立加速器研究所・スタンフォード大学のLance Dixon氏が9月1日に結果を知らされ、約2週間かけて検証した。検証は主に、関連する9ループのフォームファクターに立ち返る形で行われた。
  • Dixon氏の評価: Dixon氏は、直接振幅を計算するのは「難しすぎる」と考えていたとし、「複雑なレシピの全手順を実行し、計算能力を組織化したことは、LLMにとってかなりの勝利だ」と述べる一方、「新しい物理原理や洞察を生むのはこれから」と区別している。
  • von Hippel氏の結論: 投稿者自身の総括は抑制的で、「Claudeは既知の手法を、これまでより少し多い計算量で使った」「驚くべき方法での計算障壁の突破は見られなかった」とし、得られた教訓を「この種の作業を今や確実にこなせる(It can do this kind of thing reliably now)」という信頼性の到達点に置いている。

同時到達と開示 — 中国グループの結果、報酬関係の明示

  • 同時期の独立到達: 中国科学院のSong He氏のグループは9月17日にZenodo上で「The Symbols of Six-Gluon MHV Amplitudes through Nine Loops」と題するデータセットを公開し、同振幅のシンボル部分に独自に到達した。投稿によれば同グループは一部の拘束条件の導出にGPT-6を使ったが、全体の枠組みは人間が主導したという。
  • 今後の扱い: 9ループ結果のデータファイル(従来のループ次数と同じ形式)は9月16日付で公開されており、物理学的な解説・分析を含む論文はDixon氏、He氏らの人間研究者が執筆すると投稿は述べている。対象理論は現実の自然を記述するものではなく手法開発用の toy model であり、新粒子の予言や実験との照合を含むものではない。
  • 開示事項: 投稿末尾の開示によれば、Anthropicはvon Hippel氏をゲスト執筆に招き執筆の対価を支払った(内容・意見は同氏自身のものと記載)。Dixon氏は独立検証の対価としてClaudeの利用クレジットを受け取った。報酬付きのゲスト投稿である点は、結果の読み取りにおける前提として明示されている。
  • 未確認の点: 計算プログラム自体は配布されておらず、関数レベルの完全な再計算は別経路で二重化されていない可能性がある。本記事はAnthropic公開の投稿内容の整理であり、振幅の正当性そのものの検証を示すものではない。

出典